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イリ・キリアン

「ステッピング・ストーンズ」
振付:イリ・キリアン
音楽:ジョン・ケージ、アントン・ウェーベルン
装置・照明デザイン:ミヒャエル・シモン
衣裳:ヨーク・ヴィセル

 人間の肉体が描くラインの美しさを生み出すことにおいて、またその動きの独創性において、キリアンに勝る振付家はいない。音楽が醸す雰囲気をそのままかたちにし、しかもその音楽と肉体の動きの絶妙な組み合わせによって、これまで見たことがなかったまったく新しい世界を展開させる。

 「ダンスは人間の心の探究であり、心の反映なのだ」とキリアンは言うが、目の前にあるのは肉体の極限の美だ。この美を求めるための内面世界の冒険が、キリアンにとって振付という行為なのである。

 『ステッピング・ストーンズ』は、1991年11月にシュツットガルト・バレエ団で初演され、国際的に注目を集めた佳作。北オーストラリア先住民族の古老から聞いた「ダンスは私の父が私に教えてくれたものであって、これを私は息子に教え、受け継がせなければならない。」という言葉に大いに感銘を受け、創作したといわれる。

 すなわち、自分を終わりのない進展の鎖のほんの一部と見、それと同時に自分に託された遺産をさらに次の世代へと引き継ぎ、その文化の継承をする責任を自覚する。この考えこそキリアンの『ステッピング・ストーンズ』の根底にあると同時に、過去に対する敬意の念と見ることができるものだろう。