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イリ・キリアン

「ドリームタイム」
振付:イリ・キリアン
音楽:武満徹
舞台・衣裳:ジョン・F・マクファーレン
衣裳製作:ヨーク・ヴィセル 照明・技術監督:ヨープ・カボールト 

 1980年、キリアンはかねてより敬愛していた作曲家武満徹に自分のダンスのための音楽を委託し、二人は創作のインスピレーションを得るため、オーストラリア北部海岸のグレート島で行なわれた先住民族アボリジニの祭典を取材した。24の部族が一斉に集まり、昼間から夜半を経て日の出まで続けられる祭典は、終盤、えも言われぬ荘厳で神秘的な雰囲気に包まれた。歌とダンスの興奮、疲労とが相まって、人々は夢と現実の境を行き来するようなトランス状態に陥った。
振付家と作曲家がこの神聖な体験を共有して生まれたのが、「ドリームタイム」である。
"ドリームタイム"とは、アボリジニの先祖代々の伝承のこと。彼らにとっての人生は、自分がこの世に生を受ける遥か昔から続いている夢の続きであり、子孫へ続く終わりなき夢の一部であると考えられている。

 キリアンと武満徹もまた、以前から夢の現象について強い関心を抱いており、2人は体験した祭りのことや夢のことを語り合った。

 1981年武満徹は自身の"夢と数"シリーズの一つとして「オーケストラのための夢の時(ドリームタイム)」を書き上げ、この"短いエピソードが一見とりとめなくなく浮遊するように連なる"珠玉の楽曲は、翌年、世界初演された。ダンスが初演されたのは、さらにその1年後。

 ロングスカートの3人の女性が、あたかも夢の中で目覚めたようにゆっくりと動きだし、伸縮するテンポやふるえる装飾音に鋭く反応しながら順々に男性たちと踊っていく。途切れることのないなめらかなステップ、変幻自在にからまる男女の身体が、流麗な美を生み濃厚な叙情を立ち上がらせる。

「夢について考えることは、見えるものと見えないもの、触れられるものとそうでないものについて考えること。夢はある意味で生と死の象徴であり、転生、愛、エロティシズムをも意味するものだ」

(イリ・キリアン)