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2016/01/29

吉岡美佳 退団のお知らせ

1989年の入団以来、東京バレエ団の中心的存在として活躍してまいりました吉岡美佳が、東京バレエ団の規定によるダンサーとしての定年を迎えたため、3月末日をもって東京バレエ団を退団することになりました。 吉岡美佳の在団中、東京バレエ団団員のみでの最後の公演となる2月7日(日)の『白鳥の湖』終演後、舞台上で吉岡美佳が東京バレエ団に遺した多大な功績と貢献をたたえて、「特別団員」の称号を贈り、退団セレモニーを行う予定です。 なお、吉岡美佳は退団後、今年4月から12月までモーリス・ベジャール・バレエ団で活動することになりました。また、5月に予定されている東京バレエ団とモーリス・ベジャール・バレエ団合同による「第九交響曲」ベルギー公演にも出演することになっています。 吉岡美佳ご挨拶  東京バレエ団の前身となった「東京バレエ学校」で母がスラミフィ・メッセレル先生のクラスを受講しており、また当時お世話になっていた先生にも勧められて、東京バレエ団のオーディションを受けるため、故郷の愛媛・松山市から上京したのが26年前。入団した当初は、周りの人たちの洗練された雰囲気にひとり場違いな感じがして、『すごいところに来てしまった』と思ったものでした。  初舞台は1989年、『ラ・シルフィード』のベルリン公演の群舞のひとりでした。ベルリンへは、のちに海外公演で何度も訪れ、ベルリン国立バレエ団の『眠れる森の美女』や〈マラーホフ・アンド・フレンズ〉に客演もしたので、こんなに何度も行くことになるとは思っていませんでした。いま思うと、初舞台がベルリンだったことは不思議な縁だなと感じます。  東京バレエ団では古典からコンテンポラリーのレパートリーまで、あらゆる作品を踊らせていただきました。それ以前にも全幕で主演させていただいていましたが、強く印象に残るのは97年のウラジーミル・マラーホフさんとの『白鳥の湖』初共演です。さまざまな事情が重なって稽古場で一度しか合わせることができず、大きな不安を抱えたまま舞台に立ったのですが、互いの気持ちにぴったりと寄り添って演じることのできた、自分の中では"奇蹟"と呼べる舞台でしたし、また大きな評価をいただくことができました。この時の舞台と、のちにフリーデマン・フォーゲルさんと踊った『ジゼル』は、私の中でも本当に特別な瞬間でした。  入団するまでは古典バレエしか知らなかった私が、巨匠振付家から直接指導を受けて新作を作る現場に参加できたことも、東京バレエ団に所属していたからこそです。ベジャールさんが抜擢してくださった『M』の"女"、キリアンさんと作った『パーフェクト・コンセプション』など、創作の現場は苦労の連続でしたが、何にも代えがたい素晴らしい経験でしたし、その後の作品に繋がったのもこれらの機会があったからだと思っています。  ベジャールさんやキリアンさんのほかにも、ワシーリエフさんとマクシーモワさんに教わった『ドン・キホーテ』、マカロワさんに教わった『ラ・バヤデール』、そしてリード・アンダーソンさんに教わったクランコ振付の『オネーギン』・・・・。どれもが思い出深く、私にとって大切な宝物です。パートナーシップということでは、『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『ジゼル』などを何度もともに踊らせていただいたマラーホフさん。また、ルグリさんとの『オネーギン』パ・ド・ドゥも、ともに踊る中で互いに語らずとも通じるものが生まれていった気がしています。  東京バレエ団での最後の出演作となったのが、昨年12月、シルヴィ・ギエムさんとのツアーで踊った、キリアン振付の『ドリーム・タイム』でした。キリアンさんにはダンサーとして気に入ってもらえていましたし、この作品が最後となったのもやはり何かのご縁でしょうか。  あまりにも舞台の数や思い出が多すぎて、ここですべてを語り尽くすことはできません。けれども今の私があるのは、東京バレエ団と総監督の佐々木忠次さんに数々の機会をいただくいっぽうで、応援してくださった観客の方々、陰で支えてくださった方々がいたからだと心より感謝しております。皆様、これまでどうもありがとうございました。 吉岡美佳プロフィール 愛媛県松山市出身。12歳のときにモスクワへ短期留学する。1985年全日本バレエコンクールでジュニア部門第1位。86年10月から88年までスイスのサンガレン州立バレエ学校で学ぶ。89年、東京バレエ団に入団。 主演作品: 『白鳥の湖』オデット/オディール、『眠れる森の美女』オーロラ姫、『ジゼル』ジゼル、『ラ・シルフィード』ラ・シルフィード、『レ・シルフィード』プレリュード、『エチュード』、『オネーギン』タチヤーナ、『春の祭典』生贄、『薔薇の精』少女 主なレパートリー: 『ザ・カブキ』顔世御前、『M』生命と再生の源を象徴する女、『テーマとヴァリエーション』、『仮面舞踏会』"四季"の春、『チェロのための5つのプレリュード』 V.マラーホフと『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『レ・シルフィード』『ラ・ペリ』、M.ガニオと『ラ・シルフィード』、F.フォーゲルと『レ・シルフィード』、L.サラファーノフと『エチュード』、E.マッキーと『オネーギン』、D.ホールバーグと『ジゼル』、M.ルグリと『オネーギン』第3幕のパ・ド・ドゥを共演している。 世界初演作品: キリアン振付『パーフェクト・コンセプション』(94年)、ノイマイヤー振付『時節の色』"春""夏"(2000年)、ド・バナ振付『ホワイト・シャドウ』(10年) バレエ団初演: ベジャール振付『くるみ割り人形』母(99年)、キリアン振付『ドリーム・タイム』(00年)、ベジャール振付『バクチⅢ』(00年)、ワシーリエフ版『ドン・キホーテ』キトリ/ドゥルシネア、若いジプシーの娘(01年)、ベジャール振付『ギリシャの踊り』パ・ド・ドゥ、ハサピコ(03年)、アシュトン振付『真夏の夜の夢』タイターニア(05年)、ドーリン振付『パ・ド・カトル』タリオーニ(05年)、ラコット振付『ドナウの娘』フルール・デ・シャン(06年)、マカロワ版『ラ・バヤデール』ニキヤ(09年)、クランコ振付『オネーギン』タチヤーナ(10年)、ベジャール/ロマン振付『ダンス・イン・ザ・ミラー』(11年)、ベジャール振付『チェロのための5つのプレリュード』(11年)、ベジャール振付『第九交響曲』(14年) 11年、バレエ界での長年の功績が認められ、愛媛県「文化特別功労賞」を受賞している。