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レポート2015/06/25

【速報!】第29次海外ツアー ローザンヌ公演レポート(後編)


さて本番。主に東京バレエ団が参加した個所について触れると、第一楽章にベジャールが込めた「誕生の苦悩と喜び」を、柄本弾を先頭に、団員たちがこぶしを高く振り上げ力強く表現。「第九」というベートーヴェン晩年の最高傑作の導入部にインパクトを持たせることで、この作品がいかに大きなメッセージを携え、人類に熱い理念を訴えようとしているか、その先に続く膨大な交響曲への期待感を高めることに大きな役割を担っていた。

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静かな第三楽章は、白いレオタードとタイツに身を包んだ吉岡美佳とBBLのジュリアン・ファヴローのデュエットが会場を神秘的空間へと導いた。吉岡のしなやかな腕と指先が醸し出す優しい動きが、命の水をすくい、人を癒す。ジュリアンのたくましい身体が、吉岡を愛おしく包み、異なる世界の二人が溶け合い、限りなく純粋で清らかな愛へと昇華する様を表現していた。最終の第4楽章は「歓喜」がテーマだ。BBLのオスカー・シャコンが変容するリズムを通じて人類の複雑さ、葛藤、多様性を提示すると、それに続く柄本弾とBBLのジュリアンと大貫真幹の3人で成すソリスト集団が、祝祭的な音楽にあわせ、人間と宇宙、神の間に存在する秩序、その調和を高らかに表現した。フィナーレに近づくとBBLの女性ソリスト、アランナ・アーキバルトが持前の上背と大きな手の平を生かして人類の存在を再びアピールするが、生命の終焉を物語るかのように舞台中央に横たわる。そして80人の合唱が高らかに歌い上げるなか80人のダンサー全員が舞台に集結、東京バレエ団、BBL、ルードラ・ベジャールの生徒たちが手を取り合い、歩調をあわせ、一歩ずつ前に進む。それは、肉体は朽ちても精神は不滅であり、人類が抱き合い、助け合うというベートーヴェンの理念を文字通り体現していた。最後は、オーケストラ、合唱、ダンサーの総勢250人が一体となって盛り上げた舞台に、5000人の観客のエネルギーも加わり、会場全体が歓喜の渦に包まれた。

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満場の観客が一斉に立ち上がり、拍手とブラヴォーの嵐は長い間、鳴りやまなかった。
舞台間近の客席に座っていたジュネーブ在住のアンナ・ヴィラットさんは「ダンサーの一人ひとりの顔にも喜びが見てとれました。本当にダンサーと観客が心を通じ合わせた最高の舞台。これ以上のものってあるの?この先、何を観たらいいの、と思ってしまいます」と、目頭を熱くして語っていた。

取材/文:熊野舞(在仏ライター)

レポート2015/06/24

【速報!】第29次海外ツアー ローザンヌ公演レポート(前編)

スイス・ローザンヌの郊外、マレー・スケートリンクに設けられた5000人を収容する特設会場で6月17日に始まった東京バレエ団とベジャール・バレエ・ローザンヌ(BBL)共演によるモーリス・ベジャール振り付けの傑作、ベートーヴェン「第九交響曲」は全5公演が完売、連日とも大観衆の拍手と声援が鳴りやまないスタンディングオベーションの熱気の渦に包まれ21日、華やかに閉幕した。
ローザンヌ公演に来られなかったバレエファンのために、会場で販売されたプログラムから面白い数字を拾ってみよう。

50 ―― ベジャールが「第九」を発表したのは1964年。去年11月、東京バレエ団とBBLによる東京公演は、半世紀を経た50年目の節目にあたる。
3 ―― 共演の舞台が実現するまで3年の月日を要した。
15 ―― リハーサル期間は、海を隔てたヨーロッパと日本を行き来しながら15週間。
80 ―― 東京バレエ団とBBLのダンサーをあわせた人数。ルードラ・ベジャールの生徒もエキストラで加わった。
250 ―― 舞台上のダンサー、オーケストラ、合唱団をあわせると総勢250人。
289 ―― スケートリンクに設けられた特設舞台の総面積は289㎡。
25000 ―― 今回のローザンヌ公演を観た聴衆は2万5千人。

 この数字からも、すべてに大、大、大がつく規模で行われたことがおわかりいただけると思う。それだけに関係者たちが最高のものを作り上げようとする気概は随所にみられた。その一端を、4日目の公演前に見学したリハーサルから紹介しよう。

15-06.24_00.jpg 本公演は午後8時半から。それにあわせて午後1時から東京バレエ団のバレエレッスンが約2時間にわたって行われた。レッスンしたのは、「第九」の振付指導にあたったピョートル・ナルデリ氏自身。「モット アクセント」「ワカリマスカ」―― 親日家で、東京での準備にも足を運んでいるから団員との距離は近い。日本語を交えて熱心な指導ぶりだ。「東京バレエ団の団員たちは私の言うことを理解し敏感に反応してくれる。レッスンしていて楽しい」と、ナルデリ氏は話した。
 午後3時半からはBBLも参加しての合同リハーサル。会場に到着したジル・ロマンは柔らかい表情で団員たちと冗談を交わしていたが、いざリハーサルが始まると一変、表情が厳しくなった。躍動感にあふれる第二楽章では「リズムが甘い、音楽を無視している。ノン。ノン。ノン」。何度もダメだしが出て、同じ個所を、納得が行くまで繰り返し練習させる。吉岡美佳とジュリアン・ファヴローがデュエットを踊る第三楽章、二人が並列になって腕を交差させ横にステップを踏みながら円を描くシーンでは、二人がもっと一体化して滑らかな動きになるよう求めて、ジルも舞台に上がって直接指導していた。

15-06.24_01.jpg合同リハーサルの後、ジルに話を聞いた。

ベジャールの作品の中で、あなたは第九をどう位置づけますか?

―― 1968年のメキシコ五輪の開会式での上演を最後に、しばらくお蔵入りになった。というのも、上演するための準備にかなりの労力と時間が必要とされる重い作品だから、ベジャールは他の作品に専念するために、その決断をしたのだと思う。僕がベジャールのカンパニーに入ったのが69年だから、僕自身は踊る機会がなかった。でも、この作品は「踊るコンサート」。つまり、音楽が重要な役割を占めている。演奏家と同じで、あくまでも楽譜には忠実に、しかし現代の聴衆との距離を感じながら解釈し舞台をつくるのが僕たちの使命だと感じている。

 東京公演から半年たってのローザンヌでの公演。何か変化が起きていると感じますか?

―― ダンサーたちは毎回の公演を通じて着実に進化していると痛感する。特に今回は、NHKホールとは違って正面だけでなく、両脇の客席を加えた3面に囲まれた舞台。脇からも背中からも聴衆の視線を浴び、反応を全身で感じられる。東京バレエ団にとっては、その初体験が大きいと思う。さらに東京バレエ団とモーリス・ベジャールとの付き合いは30年にも及ぶ。長い間に培われた信頼関係、友情があるからこそ、ダンサーたちは安心して自分を解き放ち、ベジャール作品を通じて、自由に表現できるようになってきている。
 
団員たちの様子も少々、お伝えしたい。東京では連日「ラ・バヤデール」の公演があって、すぐの渡欧。リハーサルが終わって本番までの休憩時間、和やかに談笑していた女性団員たちは「時差ボケもあって、疲れが残っているというのが本音です。でも、お客さんたちの熱い声援と温かい反応に支えられて元気が湧いてきます」。共演舞台の「第九」はローザンヌ公演の後、モナコでも上演される。全行程3週間に及ぶ長期遠征になるが、ローザンヌ・バレエコンクールでのスカラシップ賞受賞後にモナコのプリンセス・グレースケリー・クラシックバレエ・アカデミーバレエスクールに留学した経験を持つ上野水香は、「ローザンヌからモナコという、偶然にも私にとってはノスタルジック・ツアー。楽しんでいます」と笑顔で話してくれた。

取材/文・撮影:熊野舞(在仏ライター)

レポート2015/06/18

【イベントレポート】第42回クラブ・アッサンブレ特別イベント「ラ・バヤデール」劇場クラス見学会レポート

6月13日(土)の『ラ・バヤデール』本番前に、東京バレエ団友の会「クラブ・アッサンブレ」会員限定の劇場クラス・レッスン見学会を開催いたしました。「クラス・レッスン」とは、ダンサーが毎日リハーサルや公演の前に行っているレッスンで、その日の身体の感覚やコンディションを確認しています。

約1年半ぶりのクラス見学会開催とあって、150名を超す会員の方々にご参加いただき、本番前から大ホールのロビーは賑やかに。参加者の中にはオペラグラスでダンサー達の動きを追っていらっしゃる方もいるほど、皆様最後まで熱心にレッスン風景をご見学されていました。

この後の本番では、主演の上野水香、柄本弾の熱演をはじめ、東京バレエ団が誇る「影の王国」の群舞など、観客の皆様からたくさんの拍手をいただき『ラ・バヤデール』は閉幕いたしました。
東京バレエ団友の会「クラブ・アッサンブレ」では、今回のクラス見学会のように会員の皆様に楽しんでいただけるイベントを企画・開催しています。その他、会員優先予約やチケットの会員割引などお得な会員特典もございます。東京バレエ団にご興味がある方、また一緒に応援してくださる方のご入会を、心よりお待ちしております!

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●「クラブ・アッサンブレ」のご入会はこちら>>>

レポート2015/06/06

「ラ・バヤデール」公開リハーサル&記者懇親会レポート

東京バレエ団は『ラ・バヤデール』の開幕を控えて、稽古も最終段階に突入。さる6月4日、公開リハーサル、および指導者のオルガ・エヴレイノフ、主演の上野水香、柄本弾を囲んでの記者懇親会が開催されました。

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1988年からマカロワ版『ラ・バヤデール』の指導を手がけているエヴレイノフは、東京バレエ団では2009年のバレエ団初演、2011年、2012年の再演、また、昨年8月の〈祝祭ガラ〉での"影の王国"抜粋上演時にも来日し、指導にあたってきました。懇親会の冒頭、マカロワ版の魅力について「魔法のクオリティをもっている。フレージング、ムーヴメントがとても優雅なのです」。この日の稽古場では、第2幕冒頭から作中屈指の名場面、"影の王国"をブラッシュアップ。「ドント・ストップ! 止まらないで!」と、ダンサー一人ひとりの動きに目を光らせる彼女の、張りのある、伸びやかな声が印象的でした。

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指導においてもっとも重要なことは、「ただステップを教えるのではなく、スタイルを発見していくこと、動きを理解していくこと、きちんとストーリーを理解し、踊りのなかでそれを演じきること、そのすべてを融合させ、一つのクオリティを生み出すことだと思っている」といいます。「たとえば"影の王国"で重要なのは、"ステップを踏む"のではなく、"ステップで踊る"ということです」

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2009年の東京バレエ団との出会いを、「素晴らしい経験」とも。「でも、2度目のこと──2011年の春のことを考えると、こみ上げてくるものがあります。東日本大震災の直後、それぞれの事情で来日できなくなったゲスト・ダンサーやスタッフがいました。当時、英国ロイヤル・バレエ団で仕事をしていた私は、悩んだ末に、芸術監督のモニカ・メイソンに相談したのです。彼女は"日本に行くべきだ"と言いました。"芸術、ダンスは皆の励みになるのだから"と」と、目を潤ませる場面も。

ニキヤ役の上野、また今回全幕では初のソロル役となる柄本については、「以前よりずっと成長している」と期待を寄せます。

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3度目のニキヤ役となる上野は、「ニキヤはとても強い女性で、内に秘めた情熱を持っている。回を重ねるごとに、もっと細かな心の動きが、少しずつ理解できるようになりました」。すると即座にエヴレイノフが「そのとおりよ! ピュアであることが、ニキヤを強くしているのです」。いっぽう柄本は「オルガ先生が指導されることを、できるだけ忠実に表現できるよう、日々練習しています」と謙虚にコメント。すると、「もっと上を狙って!」とエヴレイノフからすかさず激励がとび、スタジオでの日々の熱血稽古ぶりがうかがえました。

東京バレエ団の『ラ・バヤデール』を「パーフェクト!」と賞賛するエヴレイノフ。「最近上演される多くの『ラ・バヤデール』は、マカロワ版がベースとなっているといえます。マカロワ版の力強さを物語っていますね」と、作品の素晴らしさを力説しました。

その魅力を余すところなく伝える、充実の舞台にご期待ください。

photo:Shinji Hosono


「ラ・バヤデール」公式サイト>>>

公演情報2015/05/27

「ラ・バヤデール」ハイライト映像

「この写真(第2幕のデヴェロッペ・アラスゴンド)は、まさしく完璧さの手本です。世界各地で『ラ・バヤデール』の振付を指導するときには、在るべき理想の姿を体現するものとして、東京バレエ団のこの写真をダンサーに見せることにしています。これからも、どうか私達に規範を示し続けてください──ナタリア・マカロワ」

これは、振付・演出を手がけたナタリア・マカロワさんが、今回の「ラ・バヤデール」のプログラムのために寄せてくださったメッセージです。

20世紀を代表する名プリマのマカロワさんから"完璧さの手本"と称された東京バレエ団の一糸乱れぬコール・ド・バレエ、そして華やかなオーラを放つ大型ペア、上野水香と柄本弾が、昨年8月の創立50周年祝祭ガラでみせた名演をハイライト映像にまとめました。





新着情報2015/05/04

追悼 マイヤ・プリセツカヤ

5月2日(土)、20世紀を代表する偉大なバレリーナ、ロシアのマイヤ・プリセツカヤが心臓発作で亡くなりました。享年89歳。

1943年にボリショイ・バレエに入団したプリセツカヤは、「白鳥の湖」や「ドン・キホーテ」で大成功を収め、50~60年代には世界最高峰のバレリーナとしての評価を獲得していました。そのプリセツカヤを初めて日本に招へいしたのが東京バレエ団でした。1968年、「白鳥の湖」の舞台で、当時すでに伝説的な至芸と評判だった彼女のしなやかで情感あふれる腕の動きは、類まれな音楽性や演技力とあいまって感動を呼び大きな話題になりました。

プリセツカヤはその後、69年の〈マイヤ・プリセツカヤのすべて〉、74年の東京バレエ団創立10周年記念公演にも客演。後年まで名演を続けた「瀕死の白鳥」、また夫君のロディオン・シチェドリン編曲によるビゼーの音楽を用い、ソビエト体制の下、"闘うバレリーナ"を標ぼうするかのような情熱的な「カルメン」(アルベルト・アロンソ振付)が、強烈な印象を残しました。

そして76年には、当時東京バレエ団主催で上演された第1回世界バレエフェスティバルに、アリシア・アロンソ、マーゴ・フォンテインと並ぶ三大バレリーナの一人として妍を競い、3年後の第2回では、20世紀バレエ団(現モーリス・ベジャール・バレエ団)の故ジョルジュ・ドンとともに、ベジャール振付の「レダ」を披露。自由な表現を希求する芸術家の生き様がひときわ光彩を放ちました。

プリセツカヤは、東京バレエ団の前身である東京バレエ学校と、バレエ団の創成期に多大な尽力をくださった故スラミフィ・メッセレルの姪でもあります。また昨2014年、東京バレエ団の創立50周年にあたっては、没地となったドイツよりわざわざ祝辞を寄せてくれました。

「かなり前のこと─正確に言えば46年前のことですが─私は東京バレエ団とともに「白鳥の湖」を踊りました。それ以降私とバレエ団の間に親愛の情が生まれ、また観客も私たちのことを愛してくださいました。東京バレエ団は非常に有名なバレエ団になりました。権威あり、創造的で、常に前進しているバレエ団です。これはまさに成功です!...」

東京バレエ団と深い縁で結ばれ、また日本の舞台芸術界に多大な影響を与えた不世出の芸術家の死に、深く哀悼の意を表します。

公益財団法人日本舞台芸術振興会/東京バレエ団


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写真(左)1968年初来日公演より。相手役はニコライ・ファジェーチェフ。撮影:長谷川清一
(右)1976年、第1回世界バレエフェスティバルのカーテンコールより、中央がプリセツカヤ。

レポート2015/04/23

東京バレエ団アメリカ・デビュー! YAGP2015〈レガシー〉

既報の通り、4月17日(金)、ニューヨークで行われたユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)2015のガラ公演〈レガシー〉に東京バレエ団が出演し、アメリカ・デビューを飾りました。会場は舞台芸術の殿堂リンカーン・センター内にある、ニューヨーク・シティ・バレエの本拠地、デヴィッド・H.・コーク劇場。

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ニューヨークの一大バレエ・イベント、今回で16回目を迎える国際バレエ・コンクール、YAGP。決選終了後に行われる恒例のガラ公演の二日目に、今年は現役スターダンサーであるデヴィッド・ホールバーグが自身と繋がりのある団体を集めて企画した〈レガシー〉が行われ、共演経験のある東京バレエ団が招聘されることになったものです。

東京バレエ団はこれまで海外公演を30か国152都市において738回実施していますが、バレエ団としてアメリカ合衆国の舞台に立つのはこれが初めてとなりました。

上野水香、木村和夫を含む一行8名は4月14日にニューヨーク入りし、現地では次期芸術監督の斎藤友佳理も合流。2日間のリハーサルを経て本番の舞台に臨みました。

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〈レガシー〉では7つのプログラムが上演され、東京バレエ団の登場順は前半の最後。ボリショイ・バレエのエフゲーニャ・オブラスツォーワとセミョーン・チュージン、アメリカン・バレエ・シアターのヴェロニカ・パルト、マリインスキー・バレエのエカテリーナ・コンダウーロワ、チュージンに続いて、東京バレエ団が十八番のモーリス・ベジャール作品「バクチⅢ」を上演。木村扮するシヴァ神と、上野扮するその妻シャクティを中心に、真紅の衣裳に身を包んだ8名による、エキゾチックで力強く、かつエレガントなダンスに、会場は歓声が飛び交うほどの盛り上がりを見せました。

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木村和夫は「一回だけの公演で一発勝負だけに、会場の空気をしっかり感じながらも、地に足をつけてベジャールのスタイルをしっかり見せることを心掛けました。東京バレエ団の存在をアピールできたと思います」。YAGPのガラにはホールバーグ、ホセ・カレーニョとともに出演経験がある上野水香は、「ニューヨークの観客のノリの良さは知っていましたが、ベジャールの作品をとても喜んでくださって嬉しかったです。また、上演前にホールバーグが舞台上で東京バレエ団の紹介をしてくれたのですが、彼の心遣いや人との繋がりを大切にする気持ちが伝わってきて、ありがたいと感じました」と語りました。



ユース・アメリカ・グランプリ2015

デヴィッド・ホールバーグ プレゼンツ 〈レガシー〉

2015年4月17日(金) 7:00p.m. デヴィッド・H・コーク劇場(リンカーン・センター)



出演:

「ファラオの娘」よりパ・ド・ドゥ エフゲーニャ・オブラスツォーワ、セミョーン・チュージン(ボリショイ・バレエ)

「スクリャービン・ダンス」 ヴェロニカ・パルト(アメリカン・バレエ・シアター)

「ダイヤモンド・パ・ド・ドゥ」 エカテリーナ・コンダウーロワ(マリインスキー・バレエ)、セミョーン・チュージン(ボリショイ・バレエ)

「バクチⅢ」 上野水香、木村和夫、安田峻介、永田雄大、吉田蓮、和田康佑、竹下虎志、宮崎大樹(東京バレエ団)

新作 ABTスタジオ・カンパニー

「アンスポークン・ダイアローグ」 アンバー・スコット、ルディ・ハークス(オーストラリア・バレエ団)

「コレオグラフィック・ゲーム 3×3」 エカテリーナ・コンダウーロワ、アレクサンダー・セルゲイエフ、ほか(マリインスキー・バレエ)


撮影(舞台):瀬戸秀美

ロングインタビュー2015/04/22

【ダンサー・ロングインタビュー】 第3回-柄本弾

取材/文:新藤弘子(舞踊評論家)

15-04.16_02.jpg 3月の『ジゼル』で、初のアルブレヒト役を好演した柄本弾。力強い動きと落ち着いた演技に加え、ジゼル役の渡辺理恵の儚げな魅力を引き立てるサポートも安定感抜群だった。インタビューは公演前の慌ただしい時期に行われたが、疲れも見せず、響きのいい声でていねいに答えてくれた。

---バレエを始めた頃のことを教えてください。

 兄や姉に続いて習い始めました。小中学校時代は野球やバレーボール、水泳、バスケなどもやっていて、どちらかというとバレエは二の次。真剣にやり始めたのは高校生になってからです。


---何か転機が?

 大阪のバレエ教室の発表会に呼んでいただき、同年代の男子たちと出演したのですが、みんなもういろんな賞を取っていて、めちゃめちゃうまくて、何ひとつ勝てない(笑)。もっと真剣にやらないとバレエでやってくのは絶対に無理だと気づいて、週に8〜9回レッスンするようになりました。真剣になるのがもう少し早ければよかったなと思います。


---東京バレエ団に入るきっかけは?

 発表会やワークショップに高岸直樹さんがよく来られていて、バレエ団を身近に感じるようになりました。他のバレエ団のオーディションも受けましたが、最終的にここに入りたいと思い、決めました。その頃にはもうプロになる決意は固めていました。


---入団して苦労したことは?

 苦労しかないですね(笑)。18歳で入団して、最初の大役が新人公演の『白鳥の湖』のロットバルトだったんですが、緊張するし、衣裳は重いし、最後のリフトが上がらなくて、その夜は悔し泣きして。パ・ド・ドゥの大切さを感じたし、もう絶対リフトは失敗しないようにしようと思いましたね。
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---最近はいろいろな方の指導を受けていますね。

 小林十市さんには、『火の鳥』『ギリシャの踊り』『ボレロ』など、いろいろな踊りをご指導いただきました。振付家と一緒に仕事をしていた方から教わるのはすごく財産になります。マラーホフさんからご自身が長年踊ってきた『ジゼル』を教えていただけるのもラッキーというしかない。去年の『ロミオとジュリエット』はバレエ団初演の作品で主役という初めての経験、しかも初日ということでプレッシャーも感じていましたが、ケヴィン(・ヘイゲン)さんやノイマイヤーさんにたくさんのことを教えていただいて、いい財産になっています。


---プレッシャーや本番には強い?

15-04.16_04.jpg うーん、そういわれるんですけど、前日に本番の音楽が聞こえて眠れなくなることもあるし、緊張はあります。でも幕が上がって舞台に立つと、意外に振り切れるし楽しめる。だから強いっていわれるのかも(笑)。


---『眠れる森の美女』『ジゼル』のような古典は難しいですか?

 難しいです。マラーホフ版『眠れる森の美女』の王子も緊張しました。もともとクラシックの王子より、バジルやソロルのような役が踊りたかったので。流れるように美しくというより、ダイナミックな踊り。さらに好きなのが、力強さを前面に出す、ベジャールさんの作品です。クラシックが嫌いなわけではないけど、自分の踊りのスタイルはそちらの方が合っているような気がして。


---これからどんなダンサーを目指していきますか?

 誰みたいになりたいというのはないんですが、やってみたい作品はあります。三十代半ばくらいになったらオネーギンを踊りたい。で、若いうちにロミオをもう一度踊りたい。それからレンスキーも。東京バレエ団にいるからには、『ボレロ』のメロディにも憧れますし。


---バレエ以外のことも教えてください。いまは一人暮らし?

 はい。帰ったらもう、風呂はいって寝ているくらいで(笑)。入浴剤を入れたり、クエン酸とかアミノ酸とか、回復を促すものを摂取して体をケアする。料理は嫌いじゃないけど、片付けが面倒で。でもこの前は餃子を作りましたよ。皮を買ってきて、餡は自分で作って詰めて。


15-04.16_01.jpg---舞台では自信にあふれて見えます。今年も主役が続きますが、意気込みを聞かせてください。

 そんなことないです、小心者です(笑)。夜寝る前に、あそこ失敗したらどうしよう、とか考えます。ひとつひとつの役にまじめに取り組んで、全力でいい舞台にするしかないですね。あまり先のことを考えても中途半端になるだけなので、何が一番しなきゃいけないことなのかを間違えないように、あとはリハーサルに全力で臨むようにしたいです。


 舞台姿は貫禄さえ漂うのに、受け答えはまったく飾らず、じつに自然体。そんなギャップも柄本の魅力だろう。6月には『ラ・バヤデール』全幕初主演が待っている。力強さに加え、ノーブルさにも磨きがかかってきた柄本に、ソロル役はよく似合うはず。公演がとても楽しみになってきた。

新着情報2015/04/13

東京バレエ団に11名の新入団員が入団しました。


4月より東京バレエ団に11名の新入団員が入団しました。
前列左より清田こゆき、水野明香利、今村のぞみ、鈴木理央、
森田理沙、吉田早織、足立真里亜の女性7名。
後列左より山本達史、古道貴大、樋口祐輝、中村瑛人の男性4名です。
今後の新入団員の活躍に、皆様どうぞご期待ください。



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レポート2015/03/17

高岸直樹 退団セレモニーレポート

3月14日の「ジゼル」終演後、3月末をもって東京バレエ団を退団する高岸直樹の退団セレモニーが行われました。

「ジゼル」のカーテンコール終了後、高岸直樹の代表作である「ボレロ」の音楽が流れ始め、再び幕が上がると"直樹さん 29年間おつかれさまでした"という看板と紙吹雪が舞う中にスーツ姿の高岸が。舞台袖からダンサーたちが次々と登場し、高岸に一輪のバラを手渡していきます。一人ひとりに笑顔で応える高岸。ダンサーたちに続いて、バレエ・ミストレスの佐野志織、アーティスティック・アドバイザーのウラジーミル・マラーホフ、指揮者のワレリー・オブジャニコフ、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団長、最後に芸術監督の飯田宗孝が登場。高岸にバラを渡し、「お客様の前でこのようなセレモニーができることを嬉しく思っています。直樹お疲れさま。29年間数多くの作品の主役を務め、東京バレエ団のために踊り、みんなの励みになって貢献してきてくれた」と特別団員証が手渡されました。その後、高岸直樹が万感の思いを込めて次のように挨拶。

「私、高岸直樹は29年間お世話になりました東京バレエ団を退団させていただきます。
思えば、19歳の時に京都からやってきまして、東京バレエ団の門をたたきました。未熟な私がここまで成長させていただけたのは、バレエ団の皆さん、スタッフの方々、そしてお客様のおかげだと心から感謝しております。退団はしますが、もちろんこれからも東京バレエ団を陰ながら応援し、支えていきたいと思っています。
私自身、今後は後進の指導もしていきますが、ダンサーとしてクラシック・バレエというジャンルにとらわれず、表現者をして様々なパフォーマンスにチャレンジしていきたいと思っています。また、皆さまにお会いできるのを楽しみにしています。
東京バレエ団はこれからもますます発展していくと思います。引き続き、これからもよろしくお願いいたします」

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深く頭をさげ感謝の気持ちを伝える高岸に、観客、ダンサー、スタッフからはあたたかい拍手が贈られました。拍手が鳴り響くなか、高岸直樹といえば誰もがこの作品を思い浮かべる「ザ・カブキ」第一幕ラストの由良之助のヴァリエーションの音楽が流れ、退団セレモニーは爽やかな感動のうちに終了しました。

29年にわたり高岸直樹をご支援くださった皆さまに、改めましてお礼を申し上げます。


photo:Kiyonori Hasegawa

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