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海外ツアーレポート2017/04/08

東京バレエ団第32次海外公演〈シュツットガルト〉  初日開幕レポート!

 4月7日(金)、東京バレエ団にとって第32次海外公演となるシュツットガルト州立劇場で初日の幕があがりました。今回の演目はナタリア・マカロワ版『ラ・バヤデール』。「シュツットガルトは、クランコに育まれた"バレエの町。"そこでアカデミックな基礎が問われる古典作品を上演するのは、バレエ団にとっても私にとっても、大きな挑戦でした」と斎藤友佳理芸術監督。久々の海外での古典全幕上演であり、『ラ・バヤデール』の初めての国外上演でもあります。    座席数1,404席のシュツットガルト州立劇場は3日間とも早々にソールド・アウトとなり、観客の関心の高さを物語っています。開演前から活気づくフォワイエの観客の中には、「わざわざスイスから東京バレエ団を見るために夫婦で来ました! 私は東京バレエ団を見るのは2回目なのですが、妻に見せたいと思って一緒に来ました。チケットを取るのもなかなか大変で。毎年来てほしい!」「東京バレエ団は前回の『ザ・カブキ』も見ましたよ。素晴らしかった」といった方から、「ふだんは現代的な作品の方が好きなのですが、『ラ・バヤデール』を見たことがないのでぜひ見たいと思って来ました」という方までさまざま。    この作品はシュツットガルト・バレエ団のレパートリーにないということもあり、幕が上がるや異国情緒の漂う舞台、主演を務める上野水香と柄本弾の演技に見入っていく観客の様子が印象的でした。また、当初出演予定だった奈良春夏が足を痛めたため、2日目にガムザッティ役デビューの予定だった伝田陽美が急きょ出演。上野、柄本と合わせる時間もほとんどと取れなかったのですが、歌劇場関係者から「後で聞いてびっくりしました。とてもそのようなアクシデントがあったとは思えないくらい素晴らしかった」と言わしめたほど、立派にガムザッティ役を務めあげました。    第2幕、ナタリア・マカロワが「他のバレエ団を指導する際は、東京バレエ団の群舞の写真を「完璧」のお手本として見せている」という十八番の《影の王国》では、一糸乱れぬコール・ド・バレエに喝采が贈られ、拍手がなかなか鳴りやみません。第3幕の冒頭には、地元ジョン・クランコ・バレエ学校の卒業生でもある宮川新大が初役ながら素晴らしいブロンズ・アイドルを披露。彼にも大きな拍手が贈られました。最後の幕が降りるや、馬蹄形の客席を天井桟敷まで埋め尽くした超満員の観客から怒涛のような拍手と歓声が上がり、カーテンコールが繰り返され、劇場全体が大喝采に包まれて初日の幕が下りました。また、幕間に2階フォワイエで行われた出演者によるサイン会にも、興奮した様子の観客が多く詰め寄せていました。  small_Applaus_02(photo_Roman Novitzky).jpg  公演終了の舞台上ではシュツットガルト・バレエ団芸術監督のリード・アンダーソン氏より「素晴らしい舞台でした。また皆さんをお迎え出来て大変嬉しいです」という労いの言葉があり、バレエマスターで次期監督のタマシュ・デートリッヒ氏もあたたかく歓迎してくださいました。シュツットガルトまで駆けつけ、前日から舞台の最終仕上げを手伝ってくださった振付指導のオルガ・エヴレイノフ氏もダンサーたちを労いつつ、さっそく翌日に向けてアドバイス。    主演の大役を終えた上野水香は、「今回は急なキャスト変更があり、演技の絡みに少しドキドキしましたが、シュツットガルトの劇場はお客様の距離も近くて、緊張感というよりもとてもあたたかい雰囲気があって踊りに入りやすいんです」と、笑顔を見せていました。斎藤芸術監督も「本番が始まるまでは生きた心地がしませんでしたが、ダンサーたちを信じて送りだしました。本番では気持ちを一つにして、しっかり応えてくれたと思います。また、故佐々木忠次代表がクランコ氏と築き上げた信頼関係があってこそ、今日の公演までつながっていると思うと、身が引き締まる思いでした。私自身も『オネーギン』を踊った時からリードさんはよく存じ上げていますし、これからもこの親密な関係を大事にしていきたいと願っています。」とほっとした様子を見せていました。    シュツットガルト州立劇場はオペラ、演劇、バレエを包括する総合劇場ですが、日本でもおなじみのシュツットガルト・バレエ団の本拠地です。故ジョン・クランコが1961年にバレエ団の芸術監督となる以前はオペラの観客が中心だったそうですが、彼の着任以後は、熱心にレクチャーやデモンストレーションを行い、観客を育てる努力を惜しまず重ねてきました。現在も、すべての公演でプレトークを行い、毎シーズン必ず、小さな劇場で観客に近い距離でリハーサルを見せる〈ビハインド・ザ・シーン〉を企画するなどその遺志が引き継がれています。こうしてシュツットガルトには熱心な観客が育ち、彼らは古典作品、クランコ作品、コンテンポラリー、新作などの演目の種類に関わらずつねに劇場に足を運び、サポートを惜しまないのだそうです。この4~5年は全シーズンのチケットセールスは97~8%とほぼソールド・アウトが続くほどの人気を誇っており、いまや定期会員になるのも難しく、会員権はほとんど家族に遺贈されていくのだとか。    東京バレエ団にとって、1973年に初めて招聘されて以来、今回が10回目の訪問となります。シュツットガルトの観客にとって東京バレエ団の認知度は高く、昨年2016/17年シーズン・ラインナップが発表されるや、公演についてかなりの問い合わせが来たそうです。州立劇場では公演日の2か月前にチケット販売が開始されますが、その直後に50~60%の予約が入り、一般発売後1週間~10日でチケットが売り切れたのだとか。「東京バレエ団がいかにクオリティーの高いバレエ団ということは、観客もよく知っています。その素晴らしいバレエ団が、今までシュツットガルトで観る機会のなかった古典バレエの名作を上演する。この相乗効果によって、また大きな期待を呼んだのだと思います。チケットが売れるのはとても早かったですよ!」と、劇場広報のヴィヴィアン・アーノルド氏は語ってくれました。    シュツットガルトはバーデン=ヴュルテンベルク州の州都であり、ドイツを代表する工業都市のひとつですが、中央駅からすぐに位置する州立劇場近辺くには公園も散在し、街中はのどかな雰囲気に包まれています。劇場前のオーベラーシュロスガルテン(宮殿北側庭園)と名付けられた公園を横切る小道は「ジョン・クランコの小道」(John-Cranko-Weg)と名付けられ、シュツットガルト・バレエ団が市民と密接な関係にあるのがうかがわれます。    東京バレエ団は2017年、新年早々にベルギー・フォレストナショナルにてモーリス・ベジャール・バレエ団との合同公演『第九交響曲』で第31次海外公演を終え、今回の第32次海外公演3公演終了後には海外公演30か国153都市761回の記録を達成いたします。 photo:Ulrich Beuttenmueller

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