8月上旬、東京バレエ団のスタジオでは、12月のシルヴィ・ギエム〈ライフ・イン・プログレス〉及びシルヴィ・ギエム ファイナルで上演予定のイリ・キリアン振付「ドリームタイム」のリハーサルが行われた。9日間にわたってリハーサルを指導したエルケ・シェパース氏に、東京バレエ団での指導やキリアン作品の魅力について話を聞いた。
「とても若いな、と思いました」と東京バレエ団の第一印象を語るシェパース氏。「でも、しばらくして気づいたわ。現役のダンサーって、こんなふうに若いものだったと! 同時に、自分の果たすべき責任を強く感じるのですが、皆、やる気、向上心、新しいものに対する好奇心が強く、とてもやりやすい。素晴らしいカンパニーですね」
東京バレエ団での「ドリームタイム」初演は、2000年の〈オール・キリアン・プロ〉で、以来15年振りの上演となる。リハーサルに参加した十数人の選抜メンバーの中には、キリアン作品初挑戦のダンサーも。皆、それぞれの課題を抱えながら、キリアンの振付に意欲的に取り組んでいた。
「どこのカンパニーに行っても、皆、キリアンの踊りが好きだから、ダンサーたちがやる気を見せてくれるかどうかなんて心配は不要。その点で、私はとてもラッキーです。でも、デュエットでは多くのダンサーが苦労するわ。クラシックとは全く違ったパートナーリングの技術が必要なので、ここは、多くの時間を費やさなければ。大切なのは、動きの調和。もちろん音楽を聴くことも大切ですが、ダンサーには、互いの存在をよく"聴く"ことが求められます」
キリアン作品における男女のデュエットの素晴らしさは格別なもの。「ドリームタイム」では男女が二人、三人となって絡み、空気の流れに沿うような流麗な動きで、圧倒的な美しさを放つ。まさに"ドリームタイム"、夢の時だ。
「ええ、夢のような場面の連続です。途切れ目のない、継ぎ目のない絵を次々と見せられるよう。明確な筋書きはないけれど、たとえば、どうしてもつきまとってくる過去の経験や記憶──。そういったものが、随所に表現されていきます。『ドリームタイム』における"夢"とは、必ずしも眠っている間に見る夢ではなく、白昼夢、人生観に結びついたものなのです」
創作は1983年。キリアンは心から敬愛する作曲家、武満徹に音楽を委嘱、二人はインスピレーションを得るため、オーストラリア北部海岸のグレート島に、先住民族アボリジニの祭典を取材した。
「音楽、踊りにアボリジニの要素が具体的に反映されているわけではないけれど、アボリジニの思想から、作品の根底にあるもっとも重要なコンセプトを得ています。当時の武満は、まさに、夢について興味を抱いていた時期だったそうで、『ドリームタイム』はそこにジャストミートして生まれた、特別な作品なのです。
80年代前半の、キリアンの比較的若い時代の作品の特徴としていえるのは、とても叙情的であるということ。かつ、とても音楽的。武満の音楽は、決して派手ではないけれど、とても印象深く、強く訴えかけてくるものがあり、素晴らしいコラボレーションとなっています」
取材・文:加藤智子
撮影:長谷川清徳
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