---オブラスツォーワさんは『くるみ割り人形』をいろいろな演出で踊られていますが、ワイノーネン版についてどう思われますか?
ワイノーネン版はとても好きです。私が初めて踊った『くるみ割り人形』だからでしょうね。ワガノワ・バレエ学校の卒業の時に踊りました。これがわたしのバレリーナとしての第一歩でした。ワイノーネン版には一番優しい気持ちで接しています。踊りの展開も論理が通っているし、それでいてとても感動的で、子どもの世界を描きながら非常に完成度が高い作品ね。たぶん考えうる最高のバージョンじゃないかしら。
---作品の中ではどの場面が一番お好きですか?
そう、王子とマーシャ(クララ)が初めて出会うところですね。たぶん音楽的にももっとも感情が高まっていて、私にとってはその場面が一番強い印象を受けるところです。作品の中でもっとも感動的な場面だと思います。やはりそれは子どもが夢見ていることですし、おとぎ話のような魔法のような雰囲気があります。チャイコフスキーの音楽の中でもこのアダージオがとても好きです。このアダージオを新しいパートナーと踊ることをとても楽しみにしています。
---マーシャの役のイメージは?
まず何よりも、子どもだということですね。おとぎ話を信じているとても純粋な子。作品全体がこのテーマに貫き通されていると思います。ずっと胸に秘めてきた夢がクリスマスの夜に叶うひとりの少女の物語。彼女は自分の夢について語っています。いつの日か大人になって、素敵な王子様に出会うことができるかしら、という夢なんです。必要なのはまごころを表現することですね。それがこの作品の中で一番大事なことだと思います。
---卒業の年にマーシャを踊ることはバレリーナへのひとつの登竜門とされていましたが、バレエ学校の生徒だった頃はその役をいつも意識していましたか?
もちろん私の子ども時代の夢でした。この夢のためにより良く踊れるようにいつも努力していました。もし一番優秀な生徒になれなかったら絶対主役は踊れないとわかっていましたから。
([後編]へ続く)
photo : Damir Yusupov
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