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レポート2016/05/23

上野水香、台北のインターナショナルバレエスターガラレポート

 既報の通り、プリンシパルの上野水香が、5月20日、21日に台北で行われた「第9回インターナショナルバレエスターガラ」に出演しました。

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 会場は台北市にある国立劇場。写真の通り、外観は中国風の構えをしていますが、内側は本格的な西欧式のオペラハウス。この台北随一の劇場で、マリインスキー・バレエ団のイーゴリ・コルプと「バラの精」を、そしてアロンソ版「カルメン」のソロを2日間にわたって踊り、好評を得ました。

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 上野は参加した印象を、「台北の観客の方々はとても温かくて踊っていて気持ちがよかったです。このガラへの出演は二度目ですが、6年前のときより会場が盛り上がっていたように感じます。一緒に出演したフリーデマン・フォーゲルやドロテ・ジルベールも、とても受けていました。台湾にはバレエ・カンパニーがないと聞いていますが、このような催しが定期的に開催されて、バレエを見る方々が増えているのでしょうね」と語っていました。
 

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レポート2016/04/21

「ラ・シルフィード」公開リハーサル&記者懇親会レポート

 4月19日、目黒の東京バレエ団のスタジオで、今月末に公演を控えた『ラ・シルフィード』の公開リハーサル及び記者懇親会を実施いたしました。ライターの小田島久恵さんによるレポートをお届けします。


 4月末の公演に向けて行われた東京バレエ団の『ラ・シルフィード』の通し稽古を目黒のスタジオで見学した。1幕を踊ったのは4/29のペア、渡辺理恵と宮川新大。4月にプリンシパルに昇格した渡辺は、2月のブルメイステル版『白鳥の湖』のオデット/オディールを成功させたばかりだが、シルフィード特有のクラシカルな肩のラインがとても美しく、稽古場であることを忘れさせるような瞑想的な表情を見せた。生きた女性ではない空気に漂う妖精、というシルフィードという役の設定は役作りとして大変抽象的で難しいはずだが、現実世界に薄い被膜を張って優美な幻影で恋人を魅了する渡辺の演技は、とてもチャーミングだった。ジェイムズを踊る宮川新大は、2015年8月入団のソリストで、ブルメイステル版『白鳥の湖』では、パ・ド・カトルの端正な演技が印象的だったダンサー。ジェイムズの若々しい跳躍や鮮やかなバットマン、高速のアントルシャを正確にこなし、婚約者エフィー(29日・吉川留衣)との明るいパ・ド・ドゥも表情豊かだった。ラコット版で印象的な、現世でのカップル~ジェイムズとエフィー~とシルフィードとのパ・ド・トロワは見事なバランスで、3人による絵画のような静止ポーズにロマンティック・バレエの極致の美を見る想いだった。
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 2幕では30日の主役・沖香菜子と松野乃知が登場。小悪魔的な沖のシルフィードは、快活でロマンティックな松野のジェイムズと相性がよく、魔法のベールのシーンも真に迫っていた。松野は3年ぶり2度目のジェイムズだが、目で追っているだけで多くの楽しみを与えてくれるオーラがあり、現世を捨てて妖精の世界に迷い込んだ青年の無鉄砲さを生き生きと表し、跳躍にも思い切りが感じられた。沖のシルフィードの軽やかさと蠱惑的な表情も素晴らしい。儚げで可愛らしく、知的な個性も備わっている。新鮮なシルフィードであった。
 稽古場では、芸術監督の斎藤友佳理からコール・ド・バレエへの細かい指示が飛び、「呼吸が止まらないように」というアドバイスが頻繁に伝えられた。ソリストには、「5番のポジションをつねに忘れないように」というアドバイス。モスクワ音楽劇場でピエール・ラコットのアシスタントを務め、ギレーヌ・テスマーからも直々の指導を得た斎藤は、この演目の本質を深く知り抜いており、現役時代にも完璧なシルフィードを演じていた。具体的で愛情深い指導でバレエ団の挑戦を完成へと近づけていた。

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 その後行われた記者懇親会では、斎藤芸術監督とメインの4人のダンサーが質疑応答に答えた。キャスト一人一人に励ましの言葉を向け「ロマンティック・バレエの原点であるこの作品で本当に大切なことは、『香り』を伝えること」と語る斎藤。
「同じ基本のポーズではじまって、息果てるシーンも同じポーズで終わるバレエです。その間にずっとジェイズへの想いがある...それを軸に表現を深めていきたいです」(渡辺)「毎日が勉強の連続です。物語を通して一人の主人公を作り上げる『幕もの』の魅力にとりつかれ、毎日友佳理さんと相談しながら経験を積んでいます」(宮川)「この3年間に色々な作品を、色々な先生からの指導を受けて踊ることが出来ました。それを今回のシルフィードで生かしていきたいです」(沖)「今の僕が出来るジェイムズとして舞台を生きていけたらいいと思います。3年前の自分をビデオで見ると、今のほうが成長しているかもと思う反面、今にはない若さも感じます」(松野)
 完成間近の東京バレエ団の『ラ・シルフィード』は4月29日と30日に公演が行われる。
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(撮影:引地信彦)

ロングインタビュー2016/04/06

【ダンサー・ロングインタビュー】 第7回-宮川新大

12歳から海外を中心に活動し、2015年8月から東京バレエ団に加わった宮川新大。4月29日にラコット版『ラ・シルフィード』主演を控える注目の新人に話を聞いた。

 
16-04.06_01.jpg*バレエをはじめたきっかけを教えてください。

 ピアノやお習字と同じように、習い事のひとつでした。中学へ上がるとき、入賞しなかったらこれで最後にしようと思ってユース・アメリカ・グランプリの日本予選に出場したんです。そうしたら、まさかの1位。奨学金をもらえるなんて思っていなかったので驚きました。


*フル・スカラシップでジョン・クランコ・スクールへ留学されたのですね。

 行って2日くらいで40度近い熱を出して、始まりはばたばたでした。もちろん英語もドイツ語もしゃべれないし。留学でいちばん印象に残っているのは、16歳から卒業までの2年間教わったピョートル・ペーストフ先生のクラスです。自分のクラスに出られなかった時、たまたまそのクラスを見て「なんだこれ!」って。みんな兵隊のようにびしっと揃った動きをしてる。マラーホフやツィスカリーゼを教えた名教師ですが、当時はペーストフ先生に習いたくてクランコ・スクールに来ている男子がたくさんいたんです。12歳のぼくにはすごい衝撃でした。


*ペーストフのクラスで学んだものは?

 音の取り方とか、着地。猫のように音をさせない跳び方。軽いけれども強い足先、脚さばき。ぼくにとっては受けるだけでうまくなる魔法のクラスでした。マラーホフもエヴァン・マッキーも、教え子たちはきっと口を揃えて同じことを言うと思いますよ。競争も激しくて、同じクラスでペーストフのクラスに行けたのはぼくとダニエル・カマルゴの2人だけ。厳しく教えられて泣きそうになったけど、幸運だったと思います。


*カマルゴはシュツットガルト・バレエ団公演で大活躍していました。

16-04.06_02.jpg ダニエルはぼくにとって生涯の大親友。2人の"やんちゃ"を話し出したら明日になっちゃう(笑)。何かあっても相談できるし、ダニエルもぼくに話してくれるし。もちろん負けたくないっていうのもあります。いつか一緒に舞台に立ちたいです。


*卒業後、モスクワ音楽劇場バレエに入団されますね。

 ぼくは飛び級で卒業したので、ジョン・クランコ・スクールを終えた時、みんなよりひとつ若い17歳だったんです。17だとドイツの法律で仕事に就けない。オーディションを受けようかと思ったんですが、アジア系は西洋人にはなかなか勝てない。それならコンクールで自分のいいところを見てもらおうと、もう一度ユース・アメリカ・グランプリに挑戦しました。モスクワ音楽劇場の芸術監督だったセルゲイ・フィーリンがぼくに満点を付けてくれて、迷わずロシアへ。ロシア語がまだペラペラというわけではなかったし、劇場のシステムもドイツとは違い、なじむまでは時間がかかったけど、ドイツとも日本とも違う、バレエとの深い繋がりを感じました。ダンチェンコはとてもきれいな劇場で、『ドン・キホーテ』『バヤデルカ』『白鳥の湖』など、いろいろな演目を観るのも感動でした。


*2013年にイーサン・スティーフェル率いるロイヤル・ニュージーランド・バレエに入団。

 イーサンは小さい頃からぼくがこうなりたいと思う理想のダンサーの1人だったんです。まるでファンが写真やサインをもらいにいくみたいな気持ちでオーディションを受けました。幸いイーサンも気に入ってくれ、その場で契約をくれて。バレエ団の中では芸術監督とダンサーですが、一歩外に出たら親友みたいな存在。ツアーでアメリカに行った時、ニューヨークのお宅に一週間くらい泊めてもらったこともあります。よく一緒に飲みに行きましたし、奥さんのジリアン・マーフィー(ABT)にもよくしていただきました。


*宮川さんの性格が人を惹き付けるんですね。

 飲みに来いっていわれたらどこでも行きますよ(笑)。ABTで「ミスター・バランシン」と呼ばれていたイーサンからバランシン作品をいろいろ教えてもらえて嬉しかったです。ニュージーランドはぼくが今まで行った中でもダントツに住みやすい国なんですが、バレエに関しては後進国。たくさんの舞台に出していただき、いい経験になったけど、イーサンが辞めたのを機に退団しました。


*そしていよいよ東京バレエ団へ

 斎藤友佳理さんがラコット版『ラ・シルフィード』の指導でダンチェンコに来られたとき、ぐうぜんお会いしたのが始まりです。その時ぼくは第一幕のパ・ド・ドゥの第一キャストに選ばれたのですが、ビザの問題で踊れないまま帰国してしまいました。ロイヤル・ニュージーランド・バレエを辞めて帰国し、将来について考えていた時、何度か見学させていただき、(佐野)志織さんや友佳理さんともお話をして入団を決めました。バレエ団の規模や歴史も大事だけれど、ぼくにとっては"人"が大切。友佳理さんがぼくを育てようとしてくれていることはすぐわかったし、この人なら信じられる、ついていきたいと思って。日本で働くのは初めてなのですが、みんなとてもあったかいし、優しくしてくれる。東京に住むことのほうがまだ慣れないかもしれないですね。ニュージーランドに比べると、まず人が多い!(笑) 今、海外ツアーの作品を4つくらい同時進行でやっていて、もう頭がパンクしそうです。


*去年の12月、オーストラリア・コンセルバトワールで踊った『コッペリア』が初めての全幕主演でした。

16-04.06_03.jpg 日本人のゲストとして海外で主役を踊れたのは嬉しかったです。推薦してくれたメイナ・ギールグッド先生や、コンセルバトワールの人たちも喜んでくれました。第2幕のフランツはほとんど寝てるので、スワニルダ役の河谷まりあさんのほうが百倍大変だったと思いますけど(笑)。マイムはまだ経験が少ないので、まりあさんと毎日相談しながらやりました。現地に行ってからメイナ先生に振付の指導を受け、もとからあった作品を踊るというより、一から作品を作り上げたような感じがありました。踊りだけじゃなくマイムや間の大切さも学びましたね。


*渡辺理恵さんとの『ラ・シルフィード』は2回目の全幕主役ですね。

 『コッペリア』とは比べ物にならないほど大変だと思いますけど、今はまだ海外ツアーのほうの振りを覚えるので精一杯で。これから『ラ・シルフィード』も本格的にはじめる予定です。


*これから踊りたい作品や振付家は?

 自分はやはりクラシック・ダンサーだと思うので、そこは伸ばしていきたい。『ラ・シルフィード』のジェームスは前からやりたかった役ですし、『ジゼル』のアルブレヒトも踊りたいですね。ワシーリエフ版『ドン・キホーテ』もすごく楽しそうだし。『ラ・バヤデール』など、与えられるならいくらでも挑戦したいです。他にも『オネーギン』のレンスキー、『エチュード』、バランシン作品もやってみたい。シルヴィ・ギエムの公演で踊ったフォーサイスの『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』もとても勉強になりました。自分でそう思わなくても自分に合う作品があると思うので、これからは作品に気付かされたり、育てられたりしていきたいです。 


*バレエ以外で興味のあることは?

 ギターが大好きで、楽器屋さんへ行くと2時間くらい出てこない。ニュージーランドにいた時は、バーのセッションに飛び入り参加したり、曲を作ったりしてました。70年代のブリティッシュ・ロックが好きで、エリック・クラプトンや吉田拓郎も聞きますよ。チャーの大ファンで、トークライブに行ったらまわりのお客さんがみんな年上で。
 映画も見るし、友だちとご飯に行ったり、公園でぶらぶらしたり、あまりこもらず外に出ます。日本ではまだ余裕がないけど、落ち着いたらいろいろ観に行きたい。美術館へもよく行きます。ドイツでは教会のステンドグラスを見て回ったこともあります。


*日、英、独、露の4カ国語が話せるのは強みですね。

 12歳から合計10年、ほとんど海外で過ごしましたから。小さい頃から海外へ出たのが、ぼくにとってはよかったのかもしれません。日本はきっちりしていて、いろいろ海外とは違うところもあり、悩むこともありますが、下手に自分を作るより自然な自分でいられたらいいなと思っています。


 インタビューした1時間、明るい笑顔と言葉があふれるようだった。踊りへの情熱やオープンな人柄が幸運を呼び寄せるのだろう。24歳にしてピョートル・ペーストフ、セルゲイ・フィーリン、イーサン・スティーフェルら、バレエの第一人者たちとしっかり縁を結んだ若者は、これから始まる東京バレエ団での仕事にワクワクしているようだ。記憶に新しいのは、ブルメイステル版『白鳥の湖』で踊ったパ・ド・カトル。正確な基本姿勢から繰り出されるポーズや跳躍の伸びやかさ、内からはじけるような力強さが、くっきりと気持ちのいい印象を残した。日本での全幕初主演となる『ラ・シルフィード』はもちろん、現代作品やドラマティックな役での活躍にも期待したい。

ロングインタビュー2016/01/22

【ダンサー・ロングインタビュー】 第6回-秋元康臣

取材/文:新藤弘子(舞踊評論家)

ロシアのチェリャビンスク・バレエなどを経て、2015年8月に入団した秋元康臣。以来、恵まれたプロポーションと正確なテクニックが生み出すのびのびした表現で、踊るごとにバレエ・ファンの心をつかんでいる。12月に行われたシルヴィ・ギエム・ファイナル東京公演のリハーサル後、慌ただしいスケジュールを縫って話を聞くことができた。

*バレエとはいつ、どのようにして出会いましたか?

16-01.15_01.jpg 3歳になるちょっと前です。もともと神奈川のほうに住んでいて、鎌倉を散歩していたとき、たまたま母親がバレエ教室の看板を見つけたんです。母はバレエの経験はないのですが、舞台やオペラを鑑賞するのが好きで、それで習わせてみようと思ったらしいです。

*ご兄弟は?

 3人きょうだいのいちばん上です。弟と妹も一時期バレエを習っていましたが、続かなかったですね(笑)。

*バレエを習うことに抵抗はありませんでしたか?

 最初のうちは、行きたくないとだだをこねた時もあったかも。バレエ教室には他に男の子もいませんでしたし。でも行ってしまえば楽しかったし、自然と生活の一部になっていました。小学校では他のスポーツも楽しかったけど、だからといってバレエがいやになったことはないですね。

*その後、ロシア・バレエ・インスティテュートを経てボリショイ・バレエ学校へ留学なさいました。

 薄井(憲二)先生と、ロシアからいらしていた先生の勧めで留学を決めました。12歳から卒業まで6年間学び、冬休みや春休みはありましたけど、基本的にはロシアで過ごしましたね。もちろんロシア語は話せなかったけど、留学する前に先生と1対1で辞書を引きながら教えていただき、正確な意味や発音はわからなくても片言程度に話せるように、とりあえずアルファベットというか文字を発音できるようにだけはしておいたんです。留学での経験が、いま役に立っていますね。

*NBAバレエ団、Kバレエカンパニー、チェリャビンスク・バレエなど、いろいろなバレエ団で活躍されました。思い切りよく決断するほうですか?

 常に自分の中で悩んだり考えたりしていて、スパッと切り替わるというふうには思わないです。自分で一つのテーマを作って、そこまでいったら終わり、というふうにはしたくないんです。ボリショイ・バレエ学校に関していえば、毎日いい意味で何も考えずに、ひたすらバレエと向き合っていられる環境だったので、卒業するまでの6年間がすごく長くて濃厚で。とても充実していただけに、いざ卒業と言われた時、正直なにかこう、ひとつ終わってしまったような感覚になりました。

*憧れや目標になるようなダンサーはいますか?

 なかなか1人には絞れません。もちろんいろんなダンサーを観て素晴らしいなと思いますし、それが正直な気持ちではありますが、例を挙げてしまうと、きりがなくなってしまうので。(笑)

*色々な経験をされた秋元さんが、東京バレエ団を選ばれた理由は何だったのでしょうか。

 やはりレパートリーですね。作品の種類や幅というか、古典に限らず、これだけ幅広いレパートリーを持つというのは、どの劇場(バレエ団)でもできるということじゃないですから。
 入団した時の印象は、スタジオが大きい!(笑) 最初見たとき、とにかく広いなあと。床の環境もとても良くて、いい環境だなあと思いました。ロシアでの経験でよかったのは、舞台数をこなして構えずに舞台に立てるようになったこと。余裕が出てくると、演技の細かい部分なども次はこうしてみようとか、いろいろチャレンジすることができたと思います。東京バレエ団では公演の間隔がかなり違うので、身体の作り方などは変わってくるんだろうなと思います。

*2015年8月の入団後、印象的な作品や役にはもう出会いましたか?

16-01.15_03.jpg 『ドン・キホーテ』のエスパーダは、今後もずっと覚えていると思います。これまで主役のバジルは踊っていたけど、エスパーダは踊ったことがなかったんです。体力以前の問題で、バジルとはまったく性格が違う役なので、重々しさが出せるのかとか、不安もありました。(斎藤)友佳理さんにが本番前までずっと見てくださっていて、いただいた注意を全部こなせるだろうかという不安もありましたけど、直前になったら「あとはもう思い切ってやりなさい」と言ってくださって。ほんとうにもう、思い切ってできました。友佳理さんの指導は厳しくて、細かい!(笑) でもそれがあるからこそ、リハーサルで指導されたことが自然に身体の中に入っていって、本番で思い切りできるんです。もちろんまだまだですけれど。

*東京バレエ団のレパートリーで、これから踊ってみたいものは?

 まずは2月の『白鳥の湖』のジークフリート王子。このブルメイステル版は、以前から「かっこいいなあ」と思って観ていたものなので、その主役を踊れるのはほんとうに楽しみです。あとは『ラ・バヤデール』のソロルも踊ってみたいです。

*ギエムの引退公演ではフォーサイス振付『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』も踊られていますね。

 フォーサイス作品を踊るのは初めて。昨日の公演で3回目でしたが、舞台の数を追うごとに、だんだん身体の使い方、動き方、自分がどれだけ動けるか、難しさの中で少しずつ掴んできている感じでしょうか。まだまだやるべきこと、目指すところは限りなくあるんですけど...。

*ベジャール作品などは?

 今までやったことのないものだし、もちろん興味はあります。

*将来こういうふうになりたい、という理想像のようなものはありますか?

 正直、特に描いていません。その時を楽しもうと思うので、何年後にこうなりたい、それには今こうしなければ、というような計算はしてないです。こちらからやりたいと言うことはないけれど、来た役はしっかりやる。そのとき出会った作品や舞台をいかに楽しめるかを考えます。レパートリーの多い東京バレエ団は、そういう意味でも楽しみです。

*バレエ以外ではどんなものに興味がありますか?

 本では伊坂幸太郎の独特な世界が好きですね。一つの物語を、いろいろな人の目線から描いている。映画もけっこうジャンル問わず見ています。いちばん最近は「007」。邦画だと「グラスホッパー」。これも伊坂さんの本で読んで、映画化されたら観に行こうと思っていたので。

*ミステリアスな雰囲気もお持ちです。バレエ以外の時は何をしていますか。


 至って普通です(笑)。バラエティ番組もお笑いも観るし、その時したいことをしてる。ツイッターやFacebookはやっていません。それよりは踊りを観てほしい。

*ギエムさんとの共演で感じるものはありましたか?

 感じるというか、いつもダメ出しをされていて。この前も終演後の移動中に、その日の本番の映像を見ながら注意してくれました。

*見どころがあるからこそ注意したくなるのでしょうね。ブルメイステル版『白鳥の湖』を観に来てくれるファンの方たちにメッセージをお願いします。

 作品や物語の、全体の魅力をぜひ観てほしいです。特にぼくだけ観てくださいとは言いません(笑)。

 
 華やかな舞台での姿に比べ、素顔は穏やかでクールに見える。けれども話を聞くほどに、バレエに対する迷いのなさや、芯のしっかりした性格が浮き彫りになってくる。優美さと力強さが同居する秋元の踊りの原点は、やはりロシアでの体験にありそうだ。ボリショイ・バレエ学校の恩師イーゴリ・ニコライヴィッチ・ウクススニコフについて、「どなられるし拳骨は飛ぶし、でもすごく男らしくて心の広い先生。踊る楽しさを教えてもらえた」と語る秋元。東京バレエ団という絶好の活躍の場を得た彼が、揺るぎないダンス・クラシックの基礎を活かしてどんな舞台を見せてくれるか。これからの活躍が楽しみだ。

レポート2016/01/20

「白鳥の湖」公開リハーサル&懇親会レポート

 ブルメイステル版『白鳥の湖』バレエ団初演を半月後に控えた1月15日、東京バレエ団は同作の公開リハーサルを実施、斎藤友佳理芸術監督の陣頭指揮で、第2幕、第3幕のリハーサルが披露されました。
 第2幕、白鳥たちのコール・ド・バレエの中心にいたのは、2月6日に主役を踊る渡辺理恵、秋元康臣のペア。斎藤、バレエ・ミストレス佐野志織らの傍らには、新年から指導に参加している元ボリショイ・バレエ・プリンシパルのニコライ・フョードロフ氏の姿も。3日目に主役を踊る川島麻実子、岸本秀雄組も、彼のアドバイスにじっと耳を傾けます。
 続く第3幕、各国の踊りのダンサーたちが次々と登場しますが、ブルメイステル版では、彼らはすべてロットバルトの手下という設定。皆、王子がオディールに愛を誓うよう猛烈なアピールを繰り広げます。身を乗り出して指示を出すのは、昨年8月に続いて再来日したキャラクターダンスの指導者、マルガリータ・ルアノ氏。場の熱気が徐々に高まると、初日に主役を務める上野水香・柄本弾によるグラン・パ・ド・ドゥが始まり、やがてコール・ド・バレエも一体となってクライマックスへ──。
 リハーサル終了後の記者懇親会で斎藤は、バレエ団の原点ともいえる『白鳥の湖』を上演するにあたり、新たにブルメイステル版を選んだ理由として、ロシアで最初に観て心を動かされたことと、この第3幕のグラン・パ・ド・ドゥを挙げます。「コーダでは何十人ものコール・ド・バレエが必要。皆で力を合わせ、東京バレエ団のいちばんの強みが出せる作品なのです」。ブルメイステルの演出意図に沿うよう、同作品を初演したモスクワ音楽劇場の衣裳を借り、さらには東京バレエ団のスタッフで力を合わせ、新たに舞台装置を制作したことにも触れました。
 第3幕について尋ねられたルアノ氏は、「ドラマティックな要素が非常に強い。各国の踊りのダンサーたちは皆、悪の力をもってジークフリート王子の意識を虜にするという目的のために登場します」。オデット/オディール役のダンサーたちも「ブルメイステル版はより大きな力でドラマを伝えることのできる作品」(上野)、「これまで疑問に思っていたことが、一つひとつ解けていくよう」(渡辺)、「お客さまにとってもわかりやすい作品と思います」(川島)と、その魅力を紹介しました。王子役の指導について尋ねられたフョードロフ氏は「3人には自分らしい王子を演じてほしい。私のコピーではなく、他の人の真似もしてほしくないのです」と彼らを激励しました。
 本番までの残された時間、「何をすべきか明確に見えてきた」と話していた斎藤。スタッフ、ダンサーが一丸となって創り上げる舞台に、どうぞご期待ください。
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レポート2016/01/19

「白鳥の湖」振付指導者  アルカージー・ニコラエフ インタビュー

 東京バレエ団は2016年2月、ウラジーミル・ブルメイステル版『白鳥の湖』バレエ団初演にのぞむ。その準備が進むなか、10月中旬、モスクワから指導者のアルカージー・ニコラエフ氏を迎え、9日間にわたる濃密なリハーサルが展開された。モスクワ音楽劇場でソリストとして活躍、ブルメイステルのもとでこの作品を踊っていたというニコラエフ氏に、リハーサルの様子やこの版の魅力を聞いた。
 まず、稽古場での東京バレエ団の印象を尋ねると、「技術面に長けたダンサーもいれば、表現力に優れたダンサーもいる。個性は皆それぞれですが、演技というものはとても難しいものですね」。きれいな日本語で、「難しいね」、と繰り返す。
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「ブルメイステルはパリ・オペラ座に初めて招聘されたロシアの振付家ですが、彼の『白鳥の湖』は本当に素晴らしい。何よりもまず、知識がある人もそうでない人も、前もってあらすじを読まずに舞台を観て、物語を理解できる。すべてが演技によって支えられている作品なのです」
 最も特徴的なのは第3幕だという。
「スペイン、ハンガリーなどの各国の踊りは、単なるディヴェルティスマンではなく、すべて悪魔ロットバルトとその手下たちが創り出す世界。彼らはジークフリート王子がオデットを裏切るように導けと、ロットバルトに命令されているのです。どうもその企てがうまくいかないということになると、オディール自身も呼んできて、ジークフリートを惑わす。彼はもうわけがわからなくなり、大事に持っていたオデットの羽根をオディールに手渡す。その瞬間、オデットを裏切ってしまったことが明らかになるのです」
 自身もジークフリート王子をはじめ、ロットバルト、パ・ド・カトルと様々な役柄を踊ってきた。
「でも、私にとって最も価値があるのは、1953年の初演の時に小姓役で出演したことなんですよ! 私は11歳でした。初めての舞台でしたから、すごく緊張していましたね(笑)。もう62年も経ちました」
 ドラマティックな出来事を巧みに演出することに長けていたというブルメイステルから、多くを学んだとも。
「彼はこう言いました。『そんなにたくさん回るピルエットなんて見たくない! ジークフリートがオディールに対して踊っているヴァリエーションなのだから、回転数は二の次だ!』と。彼にとって最も重要なのは、その踊りは何について語っているのか、ということなのです」
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 稽古場では、子どもの頃からこの作品に親しんできたという斎藤友佳理から、「昔のモスクワ音楽劇場は、こんなふうにやっていたのでは?」と意見を求められる場面も。
「舞台というものは時間とともに変化してしまうところがあります。ダンサーがそれぞれに即興でやったことが、そのまま定着してしまうことも。友佳理が私に望んでいるのは『最初はどのように演じられていたのか、見せてほしい』ということでした。時間は限られていますが、その中で、できるだけ多くのことを伝えたかったのです」
 ニコラエフ氏からたくさんのものを受け取ったダンサーたち。2月の初演に向けて、ひたすらに稽古を積み重ねていく。


取材・文:加藤智子

新着情報2016/01/01

東京バレエ団ダンサーからの年賀状2016

明けましておめでとうございます。

2015年は、斎藤友佳理が東京バレエ団の芸術監督に就任し、新しいスタートを切った年になりました。
『眠れる森の美女』、『ジゼル』、『ラ・バヤデール』、世界バレエフェスティバル、めぐろバレエ祭り、第29次海外公演『第九交響曲』、横浜ベイサイドバレエ、『ドン・キホーテ』、シルヴィ・ギエム公演への出演と、これだけのステージを無事終えることが出来ましたのも、劇場へ足を運んでくださった全ての方々のお力添えのお陰と、感謝致しております。ダンサー、スタッフ一同、心より御礼申し上げます。

ダンサーからの新年のご挨拶と致しまして、「クラブ・アッサンブレ」の会員様には、直筆サイン入りの年賀状をお送りしております。下記にて全ダンサーのサインを一挙公開いたしますので、どのダンサーからの年賀状か、ぜひ答え合わせをしてみてください。

2016年も、東京バレエ団はたくさんの作品をご用意して、皆様のご来場をお待ち致しております。まずは、2月に初演するブルメイステル版『白鳥の湖』でお会いしましょう!

本年も、東京バレエ団をどうぞ宜しくお願い申し上げます。



【プリンシパル】

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【ソリスト】

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【アーティスト】

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レポート2015/12/29

河谷まりあ、宮川新大 オーストラリア・コンセルバトワール「コッペリア」報告

12月18日に河谷まりあと宮川新大がメルボルンのオーストラリア・コンセルバトワールで「コッペリア」全幕に主演しました。
これは、元オーストラリア・バレエ団芸術監督のメイナ・ギールグッドさんが、自身の振付・演出作に2人が主演することを強く望み実現したもので、河谷と宮川は12月4日に日本を立ち、約2週間のリハーサルを重ねて本番に臨みました。

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コッペリア2.jpg 「最初は海外でゲストとして主演することが不安でした。メイナさんから、"まりあにスワニルダをやって欲しい、まりあしかいない!"と言われ、その言葉を信じで頑張りました。
 校長先生のクリスティーヌさん自らが衣裳を作ってくださったり、ご主人のリカルドさんもサポートを教えてくださったり。皆さんが温かく見守ってくださるからこそ、真ん中をやらせていただく意味、プロフェッショナルでならなければならないと強く感じて本番に臨みました。
 オーストラリアのお客様は舞台の最中でも笑ったり、立ちあがったり、感情を素直に表現してくださいます。もっともっと舞台を楽しんでいただきたいと思う気持ちが湧きあがってきましたね。
 リハーサルが2週間しかありませんでしたが、メイナさんは目線や指先にまで細かく指導してくださり、私のいろんな引き出しを開けていただいたように思います」(河谷まりあ)



コッペリア6.jpgこの公演の成功には、校長先生のクリスティーヌさんやご主人のリカルドさんのサポートがあってこそだったと、河谷、宮川ともに口を揃えます。自宅に招いてくださったり、食事に連れ出してくれたりと、メイナさんともども、2人がリラックスして舞台に上がれるように、細やかな心くばりをしてくださったそうです。



コッペリア4.jpg「2週間連日8時間のリハーサルというハードな生活でしたが、みなさん良い方たちで温かく迎えてくださり、楽しくオーストラリアでの日々を過ごすことができました。
 僕にとってこの「コッペリア」が人生初の全幕主演でした。集中力と体力のコントロール、そして「コッペリア」ならではのマイムなど、経験したことのないことへの挑戦でしたが、公演はとても盛り上がり、スタンディングオベーションしてくださった方もいらっしゃいました。今回、僕たちを主役に推薦してくださったメイナさんもボロボロ泣いて"よかった!"と言ってくださって。
 4月の「ラ・シルフィード」前に、全幕主役の流れを勉強させていただき、それを4月にもつなげられればいいと思っています。とても良い経験をさせていただきました」(宮川新大)


2週間という短いリハーサル期間に加え、1日2回公演というハードな経験をした2人。一回り大きく成長した姿を、4月の「ラ・シルフィード」のジェイムズ(宮川:4/29)とエフィー(河谷:4/30)で見せてくれるに違いありません。どうぞ、ご期待ください。

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新着情報2015/12/19

東急ジルベスターコンサートで東京バレエ団が「ボレロ」ほか2作で出演! 大石裕香さん(振付家) インタビュー

ss_trim★IMG_8296.jpg シルヴィ・ギエムが「ボレロ」でファイナルステージを飾り、12月31日(木)にテレビ東京系で生中継される、〈東急ジルベスターコンサート2015-2016〉。このたび、東京バレエ団は「ボレロ」の他にも、第2部の「舞踏会の美女」、『くるみ割り人形』から「花のワルツ」で出演することが決定しました。

 振付を担当したのは、ハンブルク・バレエ団で活躍し、夏の〈第14回世界バレエフェスティバル〉で自身の振付『ウロボロス』を披露した大石裕香さん。現在は振付家として宝塚歌劇団公演の振付などにも関わっている彼女に、ジルベスターコンサートのための作品の見どころについてお話をうかがいました。


●今回のお話を聞いた時のお気持ちを教えてください。

大石:まずは、びっくりしました(笑)。そして、ハンブルク・バレエ団の『ロミオとジュリエット』でお世話になりとても親近感のある東京バレエ団の皆さんと、またご一緒できることがすごく嬉しかったです。

●振付作品についてのイメージを教えてください。まずはアンダーソン「舞踏会の美女」について。

 私は振付を考えるとき、まず曲を聞きながらドラマ性や感情の動きなどを考えてイメージを作っていきます。この曲を聴いたときは、まずレビューのイメージが浮かびました。そこで、女性は6人でイブニングドレス、男性は1人だけで、黒のタキシードにシルクハットのイメージにしようと。ちょっと疲れた現代の男性が、舞踏会の世界に誘われていくコンセプトにしました。

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●『くるみ割り人形』から「花のワルツ」については。

 「花のワルツ」といえば、とても有名な曲ですし、またバレエ団ごとのイメージがありますよね。でもどれもほんわかとした雰囲気の中で踊っている感じなのは同じだと思います。そこで今回、私が振付けするにあたって、そのほんわかした感じを崩してみたいと思いました。もっと華やかに、ワクワクさせるようなものができないかと。

 男女6組のダンサーが登場しますが、皆さんが思っている「花のワルツ」では考えられないくらい"踊ってる"と思います。どれくらい踊るのかといえば、踊り終わったダンサーの皆さんがゼイゼイ言うくらい、で分かりますか?(笑)。
見どころは、目まぐるしく変わるフォーメーション。「あそこにいた人が、いつの間にあんなところに!」と、同じところに一瞬としていないくらい、人が入れ替わり立ち替わり変わっていきます。面白いと思っていただけると思います。

●振付の楽しさとは。

 自分の頭の中だけの想像だったことが、白紙の状態から目に見える形となって現れる。自分の想像以上のものが現れたその瞬間、「あらすごい楽しい」って(笑)。そこに出来上がっているのは、私の頭の中だけのものではなく、ダンサーが加えた何かもあるし、衣裳、セット、そのほかのものも加わって。新しいミクスチャーというか、色んなものが合体したものだから自分の想像以上のものになるわけですよね。それがすごく楽しいんです。ですから今回も東京バレエ団の皆さんと楽しみながら作っています。

●公演を楽しみにしている方々へ向けて、メッセージをお願いします。

 新年への幕開けとして、皆さんを華やかな気分にするステージになったらいいなと思います。芸術や舞台を愛してくださる方々がいないと、私たちは活動できません。すごくスピーディーに動いている時代の中、こうした芸術をサポートしてくださる皆さんや、テレビ放映してくださるテレビ局のもと、このようなコンサートができることは素晴らしいことだと思っています。そこに振付として関わらせていただくことは、ほんとうに光栄に思っています。12月31日の舞台と放送をご期待ください!

ロングインタビュー2015/10/23

【ダンサー・ロングインタビュー】 第5回-梅澤紘貴

取材/文:新藤弘子(舞踊評論家)

*バレエを始めた頃のことを教えてください。

 姉が地元の教室でバレエを習っていて、母親について行ったとき「ぼくもやりたい」と言ったみたいです。男の子は自分のほかに1人か2人。小学校に入っても、やめようと思ったことはなかったので、たぶん楽しかったんだと思います。小、中学校にかけて部活はバスケットボールをやっていて、一時期バレエとバスケットのどちらをとるか迷ったこともあります。体力があまりないので、両方はきつくて。そのとき、バレエを選びました。


*ご家族もバレエがお好きなんですか?

 母はピアノを教えていて、バレエもとても好きだったようです。大きくなってからですが、バレエ公演にも何回か連れていってもらいました。ぼくはバンドネオンの小松亮太さんが大好きで、小松さんの演奏するタンゴとバレエがコラボする公演を観に行った記憶があるんです。タンゴとかジャズとか、音楽はジャンルを問わず好きですね。学校やバレエの友だちと、カラオケでそのとき流行ってる歌を歌ったりして。ヒップホップとか、そういうダンスも好きで、学校の廊下で友だちと練習したりしてました。当時はただ遊びでやってただけですけど。

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*東京バレエ学校に入ったのは?

 高1からです。入学したら、男の子がたくさんいたのですごく刺激になりました。競い合ったり遊んだり、でもその時は、まだプロになろうとはっきりは決めていなくて。高3までの3年間いたんですが、同い年の友だちがバレエ団に入ろうと誘ってくれたんです。ちょうどその頃『ザ・カブキ』を観てすごく感動して、絶対にここに入ろうと決意しました。


*入団して、たいへんだったことは?

 ぼくは18歳で入団しましたが、同期の年齢はいろいろで、いちばん上の方は30歳くらい。話題もあまり合わないし、やっていることも幅広すぎて、この中でやっていけるのかなと、ちょっと不安になったこともありました。バレエ団の中の決まり事も全く知らなかったので、先輩に怒られたり教えていただいたりしながら、少しずつなじんでいきました。


*悩んだりやめたくなったりしたことはありましたか?

 それはしょっちゅうです。自分の動きや踊りに幻滅することもあるし、特に最初の頃はなかなか役につけなくて、アンダーばかりでしたし。他の人たちは個性があって、後輩でも早く役についたりすることがけっこうあるのに、ぼくは誰かがケガをした時のピンチヒッターみたいなことが多かった。自分は個性が「ない」ので、どうやったら役に入れるんだろうと悩んで、やめたくなったことはありました。


*踏みとどまった理由は?

 やっぱりバレエが好きだったし、負けず嫌いだから、というのもありますね。そこでやめたくない、もうちょっと頑張ろうと思って。そうしたら少しずつ、最初からキャストに入れることが多くなりました。先輩が大勢退団された時期があって、その頃からどんどんソリストの役が回ってくるようになりました。そうなればなったで、ソリストの踊りは難しいですから、うまく踊れなくて自信をなくしたり。常に悩んではいます。


*印象に残っている役はありますか?

 自分が変わった時だな、と思うのが『くるみ割り人形』の猫のフェリックスです。小林十市さんに憧れていたので、直接教えていただけることになったのが、すごく嬉しかった。中国やギリシャの踊りなどで、それまでも教えていただくことはあったけれど、一対一でというのは初めてだったんです。それから『春の祭典』の生贄で、ジル・ロマンさんに教えていただけたのも印象深いです。初めてのリハーサルのとき、怖くて震えていたんですけど、思い切りぶつかっていこうと全力でやったら、意外に優しくて。もちろん厳しい部分もあるけど、こんなに優しく教えてもらえるんだって、びっくりしました。自分には個性がないと思っていたんですけど、続けていくうちに、逆に何にでも染まれるんじゃないかって思い始めて。だからいまは、与えていただいた役は全部、チャンスだと思ってやっています。

 
*『ドン・キホーテ』のガマーシュも面白かったです。

 そういう役なので(笑)。こういう"はっちゃけた"役は、『ペトルーシュカ』の「お祭り好きの商人」以来ですね。ぼくは踊ることも好きだけど、演技するのも好きなんです。踊りはまずテクニックを成功させなきゃならないけど、演技がメインの役は、その心配をしないで自分をその役に変えることに集中できる。だから、ガマーシュやヒラリオンはすごく楽しいし、やりがいがあるんですよ。


*ワシーリエフさんの指導はいかがでしたか。

 演技指導もかなりしていただきました。具体的な振付なしで突然、「こんな感じの演技をこの音でやってみて」みたいにいわれて焦りましたけど、自分で考えてやってみることもできるんだと気がつきました。それからいろんなところで自分で芝居を考えるようになりました。友佳理さん(ワシーリエフとともにこの作品の指導を行った現芸術監督・斎藤友佳理)も、「ワシーリエフさんは信頼してくれているから、思い切りやって」と言ってくださって。


*バジル役についての思いを聞かせてください。

15-10.23_02.jpg まさかバジル役が来るとは思っていませんでした。踊ってみても最初のうちは「...やっぱ無理だわ」と(笑)。でも、踊っているうちにだんだん自分になじんできて、いまはけっこう楽しめるようになってきました。体力的にもきついけど、キトリのほうが出ているシーンが長いから大変だと思う。大きなリフトがたくさんあるのも難しいですね。片手を離したり、女性を投げてキャッチしたり、タイミングも合わなければいけないし。リフトで筋肉がついていくので特別なトレーニングはしていませんが、ぼく細いんで、いまさらですが、もう少し身体を鍛えなきゃと思ってます。


*パートナーの沖さんはどんな人?

 何度も組んでいるだけあって、踊りやすいし、何でも言えるのがいいですね。ここはこうしたらいいんじゃないかとか、お互いに言い合って一緒に成長できるパートナーというか。練習中、ぼくは暗くなるタイプですが、彼女はとても明るくて、その明るさでひっぱっていってくれるので、組んでいると元気をもらえます。自分の中ではベストなパートナーだと思っています。


*ダンサーとしての将来については。

 ぼくは条件もよくないし、基本もかなり欠けていると思うので、そういうところをどんどん改善して、できるだけきれいなラインを求めていければと思います。特にどの振付家の作品ということはなく、何でも来るものに挑戦していきたい。ただきれいに踊るような作品より、自分の感情で動ける作品が楽しいですね。ストーリーがあるのもいいし、振付の中に何か意味が込められているのもいい。自分に限界を感じることもありますけど、絶対にそれを越えられると信じてやっています。


*最後にプライベートなことを。気分転換は何を?

 部屋で映画を観たり、本を読んだり。疲れるので、あまり外へは出かけません(笑)。いまはバレエでいっぱいいっぱいなので、他のことはあまり考えられないんですが、いろんなダンスをやってみたいですね。バレエだけじゃなくてヒップホップとか。踊りの幅が拡がるし。スポーツは観るよりやるほうが好き。バスケットはいつでもやりたいと思ってるんですが、時間がなくて。


 スリムで上品なたたずまいが印象的な梅澤。2012年に踊ったベジャール振付『くるみ割り人形』の猫のフェリックスを皮切りに、注目の役を着実に自分のものにしてきた。特にこの2年間は、『ドン・キホーテ』のバジルとガマーシュ、『ロミオとジュリエット』のパリス、『ラ・バヤデール』のブロンズ像など、役柄の幅も一気に拡がった。神奈川県民ホールでのワシーリエフ版『ドン・キホーテ』主演は、首都圏のバレエ・ファンが心待ちにしていたといってもいいだろう。
 インタビューの場では、物静かななかに、独特のユーモアや個性をのぞかせる。バスケットボールやヒップホップ・ダンス、ミステリーや映画が好き。自分を「人見知りで口べた」と評する梅澤だが、最近の舞台での豊かな表現や躍動感を見ると、そんなことは忘れてしまう。というより、このギャップの大きさこそが梅澤の個性なのだろう。2人のインタビューを通じて、沖との相性の良さも実感。まるで磁石の両極のような2人が巻き起こすセンセーションに期待したい。


photo:Kiyoniri Hasegawa


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